北九州市自治会情報ポータル

1 災害時に頼りになる自治会活動

「牧山地区から自然災害犠牲者を出さない」 ~牧山地区自治会の防災への取組み~

防災リーダー合同研修での事例紹介

 令和3年11月2日(火)、北九州市市民防災センターにて、北九州市市民防災会総連合会の主催による「防災リーダー合同研修」が開催されました。市内各区から60名もの防災リーダーが参集し、熱心に防災研修や体験訓練を受けるなか、戸畑区の牧山地区自治会・横田健治会長より、地域における防災活動についての事例紹介がありました。 ここで語られた事例を中心に、横田会長からお聴きした実情なども踏まえ、「牧山地区から自然災害犠牲者を出さない」ための取組みをご紹介します。
防災リーダー合同研修での事例紹介

牧山地区について

 牧山地区は洞海湾沿いに八幡東区と接する場所に位置します。海岸線から引き続く工場地帯を背景に、そこから急角度で切り立つ傾斜地が居住区域の多くを占めています。 土砂災害警戒・特別警戒区域に指定された場所も多く、特に土砂災害への警戒が必要な地区となっています。高齢化率も非常に高く、地形的、人的な要件から、災害への事前の備えが極めて重要な地区です。
牧山地区について

「歴史から学び、教訓を伝承し、今にいかす」

 牧山地区で平成30年度から自治会長に就任している横田会長は、「みんなで防災」という言葉をキーワードに、地区全体として防災に取り組むことを重要視しています。 この取り組みの最終目標が、「牧山地区から自然災害犠牲者を出さない」ことです。
 
 自治会長への就任後、牧山地区での防災活動の推進に取り組むにあたり、横田会長は、自分たちが何をしようとしているのか、ターゲットを明確にすることにこだわりました。 それが、「歴史から学び、教訓を伝承し、今にいかす」ことです。これをマクロの目標とし、実行面での手段として、「みんなで防災」を位置付けました。
 
 横田会長はまず、協議会長(町内会長)の意識改革に取り組みました。協議会長を対象に、過去に実際に災害や避難を経験した自治会役員の自宅を舞台として、 市の防災担当を招いての出前講演会を実施しました。膝を突き合わせて語り合うことで、地域のリーダーである協議会長に防災を主体的に捉えて欲しい・・・ 横田会長の想いは、協議会長の皆さんの共感を得ることとなりました。
 経験者の意見を踏まえながら、過去の水害、土砂災害などの教訓を引き出し、いま不足しているものを洗い出すことで、災害に対する脅威は共通認識となり、 防災への対処法を理解していくことの重要性を再確認しました。そして、その手段として「みんなで防災」に取り組むことへの合意を得ることが出来ました。

「みんなで防災」とは組織作り

 横田会長によれば、「みんなで防災」とは、組織作りを意味します。
 協議会長(町内会長)を核とした組織を編成し、それを継続し、例え住人の構成や情勢が変化していったとしても、将来に引き継いでいける・・・ そのような強固な組織があってこそ、いざという時に動じずに、これまでの訓練で培った最善の行動を取ることが出来る、そう考えているからです。

資料1

 組織の継続のために、牧山地区ではシンプルな「約束事」(資料1参照)を定めています。
 1つは、「知り得た情報は直ちにお知らせする」ことで、警戒レベル3で市民センターが避難所として開設された時などに実施されます。 もう1つは「住民から知らない情報をいただく」ことです。特に「住民から知らない情報をいただく」ことについては、「何かを知らせると役に立つ」経験から、 情報共有の価値を知らしめる効果があるといいます。
 その1つの例として、令和元年九州北部豪雨の際、子どもだけで留守中の家庭から、子どもが居なくなってしまうという事がありました。 この時、定められた約束どおりにボトムアップで情報が届けられ、地域全体で安否確認を行い、結果的に子どもが家に戻ったところまで確認することが出来ました。
 
 「みんなで防災」では、牧山地区の特性から、早期の情報伝達・情報共有を行い、早めの避難に徹することとし、また分散避難を推奨しています。 この方針と実際の手段の確立に当たっては、市から派遣されたファシリテーター(調整役)の働きも重要でした。
 ファシリテーターは牧山地区の過去の災害の特徴を調べており、防災に関する会議の際に、現在の情勢、地形、人のつながり、体制、様々なことを調査し、 照らし合わせていくことを提案しました。この調査結果が大きな成果物となり、牧山地区の防災におけるベースとなっています。

情報収集の継続と対応の更新

 現在でも牧山地区では、危険な箇所等の情報収集と分析を継続しています。
 毎年7月には、ファシリテーターと協同で、その年の情勢を検討のうえ作成した「牧山独自の呼びかけ」(資料2参照)を全戸配布しています。 更に、土砂災害警戒・特別警戒区域内の住人約100世帯に対しては、横田会長が緊急避難時の参考文書(資料3参照)を直接持参し、同時に危険個所の情報提供などをお願いしています。
情報収集の継続と対応の更新
 資料2
 資料3

 避難場所が開設された場合には必ず現地に赴き、不自由がないかなどを尋ねるとともに、避難の動機や手段などを調査し、安心出来る避難所の運営にいかしています。
 「みんなで防災」の成果は、時代の変化、近年の気象条件の変化、更には火災などの自然災害以外の災害にも対応していけるよう、 様々な情報とあわせて検証し、最善の状態に更新したうえで、次世代以降に引き継いでいくこととしています。

最後に ~思わぬ副産物~

 防災活動には思わぬ副産物がありました。それが「コミュニティの復活」です。
 「安全を守る」ことは、シンプルで誰もが必要とする共通のキーワードとなります。防災をとおして地域の繋がりが深まったと、横田会長は嬉しそうに語ってくれました。
思わぬ副産物
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